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船大工過去話3
2010-10-11 Mon 23:42
海賊船『ロレラ』に所属のホエルオー♀:ツィスカの過去話3話目です。

「『知識を取り入れろ』って言われても、お父さんあんまり教えてくれないしなぁ・・・。」

そんな独り言をブツブツとつぶやきながら、少女は街中を歩いていた。
身近にいる必要な知識を豊富に抱えた父親がいる。だけれど元々口数が少なく、愛想も良い方ではない父親には
それほど知識を与えてもらえることはなかった。

「自分なりに頑張って勉強しろってことかな。なら、やっぱり・・・。」

そう言い残して、彼女は右手に少しのお小遣いを握り締め、外へと勢いよく出た。







始めのうちはなかなか慣れない独特の匂い、次第にそれが心地良いと言う人もいる本の匂い。
こじんまりとした店構えにも関わらず、さまざまな本が連なった本屋に、少女は入った。
目的の本を手にし、手持ちのお金と本が同価値にあるかどうかを確かめる。
多分、ギリギリ足りるはず。
手にした本をぼんやりとした男性の店員の前に置く。

「これください。」

彼女なりのにっこり笑顔を見せたが、対する店員の表情にも笑みはあるが、少女のそれとはまるで違っていた。
例えるなら嘲笑に近いものがあった。
何がそんなに面白い?そうとも言いたくなる表情をしていたが、目的の本を手にした少女には既にどうでも良い事だった。







本を買ってからというもの、少女の手には常に金槌と本があった。
少しずつ、本に書いてある情報だけだが、取り入れては実践し、確実に自分のものにしていく。
気づけば、本は買ったときとはまるで比べ物にならないくらいにボロボロになり、
少女が重要だと思ったページだろうか、いくつものしおりが挟まっている。
あれから9年と少しの歳月が経ち、少女も成人と呼ばれる本当に一歩手前へと近づいていた。
それでも彼女は大工になる夢を追い続け、本を熟読し、金槌を勢いよく正確に振り下ろす。
この国の掟のことなど、まだ大人になりきれていないツィスカには全く知ることのない。
それが、どれほど残酷で、理不尽なものであるかなど。

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