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船大工過去話1
2010-07-06 Tue 22:36
『ロレラ』に船大工として所属しているホエルオー♀:ツィスカの過去話です。
書いた人が私ではあるものの、差別やダークな表現をメインとした内容になっております。
また、念のため書いておきますが、これから登場する人物や国は架空のものです。

それでは、追記からどうぞ。


ぴちゃり、ぴちゃりと空から降ってきた雨が、地下にある空間にさえ雨漏りという形で入り込んできた。
冷たく暗い部屋の中は、蝋燭に火が灯った粗末な明かりだけが照らしていた。
これがどこかのマッチ売りの話であれば、どんなに温かな光だと思えるだろうか。
だが皮肉なことに今ある空間はとても温かだと感じることは、お世辞にも言えない。
痛みに堪える女と、それを冷たい眼差しで見ているだけの男が、そこには存在していた。
このまま気が狂うのではなかろうか、それほどにも女の方は切羽詰ったような様子だが
男性はそれを苦痛と感じていないかのように平気な顔をして眺めているだけだった。


そんな中、一つの産声が響き渡った―


産声とともに、空間には鉄の匂いと赤が広がった。
その産声に動かされたように、男は女の産み落とした赤子を抱き上げた。
その抱き方は、愛する妻が我が子を産んでくれたという感動がまったく感じられないほど、冷酷な目をしていた。
じい、と赤子を睨んだ後、男は女に皮肉めいた笑みを見せつけた。

「赤ん坊は女だ。」

その言葉に、痛みからようやく解放され、僅かに安堵の表情を浮かべていた女が目を見張ったようになる。

「掟どおり、たった今から俺たちの下を離れ、成人するまでせいぜい自由に生かせてやる。
良いだろう?今の環境から、子育てという手間を省かれたんだ。ありがたく思ってくれるくらいじゃねえと。」

女の目は一生懸命堪えていたが、とうとう数多の大粒の涙が零れた。
自分が望まず一緒になった人との間の子供とはいえ、自分が腹を痛めて産んだ子だ。
産まれてきてくれた子は罪は無く、愛おしくない訳がない。
一緒に生活することはおろか、成長していく過程すら見届けるという夢が絶たれた。
すべてはこの国の掟のせいだ―女はそう叫びたくなった。
だがそれも、女の身分からすれば許されないことであり、また叫んだことで解放されるものではなかった。
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